旧暦歳時記

旧暦歳時記(その1)

昔々から行われてきた四季折々の行事は、旧暦で行うほうが本来の季節感を味わうことができる。  桃の節供も端午の節供も、新暦では桃の花も菖蒲の花も咲いてはいない。七夕も、新暦では梅雨のさなか。織姫、彦星の年に一度の逢瀬もままならないことが多い。
今年は月遅れの8月7日が、たまたま旧暦の7月7日にあたっている。今年はいにしえ人になって、旧暦秋7月の七夕を楽しんでみたい。
「たなばた」とは不思議な言葉だが、その語源は『古事記』や『日本書紀』に登場する「淤登多那婆多(おとたなばた)」という女性だとされる。かつては川のほとりに棚を設けて、機を織りながら神の訪れを待つ棚機津女(たなばたつめ)という乙女が存在したという。
この棚機津女の信仰のうえに、中国の牽牛・織女伝説や技芸上達を願う乞巧奠(きっこうでん)が伝わって習合し、さらに各時代のなかで変遷していったのが現在の日本の七夕行事だと考えられている。 中国でも日本でも、七夕行事は牽牛・織女2星の和合や男女の出会いを願うという色彩が濃い。玄宗皇帝と楊貴妃が、7月7日に華清池で「比翼(ひよく)の鳥、連理(れんり)の枝」の誓いをしたという白楽天の長恨歌は有名だが、『万葉集』にも「天の川 楫の音聞こゆ 彦星と織女と 今夜逢ふらしも」をはじめ、牽牛・織女の逢瀬を詠んだ歌が、約130首も収められている。 絵に添えた歌は、山上憶良の七夕の歌(巻8-1518)。「恋しいあなたが来られるようだ。衣の紐を解いて待とう」という、おおらかな歌である。